シャロンの薔薇

聖書から学んだこと・日々の出来事・ハンドメイド

『「きよしこの夜」が生まれた日』

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三本目のキャンドルを灯す、アドベント3週目に入りました。

アドベントとはクリスマスを待つ間の、四週間を指します。

一週ごとにキャンドルに火を灯し、静かに救い主のご降誕を待つ

キリスト教の厳かな習慣です。

 

この季節になると、いつも賛美歌「きよしこの夜」のエピソードを

思い出します。世界中で最も知られ、愛唱されているこの曲が

どのように誕生したのかを知る人は、多くはないでしょう。

この曲の誕生秘話を取り上げた一冊の本があります。 作者は

ポール・ギャリコというアメリカの作家です。彼はオーストリア

旅行した時、この曲の誕生秘話に心を動かされ、その感動を

ドキュメンタリータッチの物語に書き上げました。それが

タイトルにある『「きよしこの夜」が生まれた日』です。

静謐さの中に心温まるエピソードが込められた、アドベント

ふさわしい一冊を紹介したいと思います。

 

今から200年近く前のクリスマス・イヴの朝のことです。

場所はオーストリアのオーベルンドルフ村。その日の朝、

突然、教会のオルガンの音が出なくなりました。どうやら、

お腹を空かした一匹のネズミが、革のふいごにかじりついた

のが原因だったようです。クリスマス・イヴのミサの日に

オルガンが故障‥。それは教会の一大事です。

 

司祭モールとオルガン奏者で村の学校教師グルーバーの二人は、

このハプニングを乗り越えようと一致協力、ギターを使って、

ごくごく短時間で賛美歌を作り上げ、なんとかミサに間に合わせる

ことができました。

 

なんと、「きよしこの夜」は、たった一日の行事のために即興で

作られたのです。すぐに忘れ去られ、立ち消えになっていくものと

思われましたが、その後、オルガンの修理に当たったチロル地方

オルガン職人が楽譜を見つけて持ち帰ります。素朴で、静かに

心に染み入るような歌詞と旋律は、チロル地方の人々に愛され、

そこから次第に、世界中へと歌い継がれる有名な賛美曲へと

広がっていきました。

 

「作曲者は誰?」「歌詞はチロル民謡?」

この曲の生い立ちを知らない後世の人は、いろいろ囁きました。

でも、モールとグルーバーの二人は著作の権利も名誉も、いっさい

主張することはありませんでした。そういった聖潔さも、

きよしこの夜」が尊ばれる一助となったように思います。

 

コロナ一色の騒がしい一年でしたが、今、クリスマスを迎える

季節に「きよしこの夜」を口ずさみ、しばし、静けさの中に

身を委ねたいと思います。