今年も早、三月。寒さの中にも春がチラホラ芽生えてきました。
わが家のベランダも「♪ 咲いた、咲いた」のチューリップでは
ありませんが、赤・白・黄色の鉢花が賑わいを見せています。
中でも侘助(わびすけ)という真っ赤な椿には元気をもらっています。
日本の伝統色を調べると、「赤」だけでも何種類もあることにビックリ!
紅緋(べにひ)、赤、猩々緋(しょうじょうひ)、紅(べに)、
深緋(こきひ)、緋色、赤丹(あかに)、紅赤(べにあか)などなど。
侘助の赤は深紅に近いので、深緋(こきひ)あたりでしょうか?
寒い季節、真っ赤な花の色に元気をもらえるからか、お茶会では
大変に重宝されるようです。華やかな色味を持ちながら、花弁を大きく
広げない奥ゆかしさが日本の文化に合うのかもしれません。
茶人、千利休が「侘(わび)」「寂(さび)」があり、茶道に通じる
花として好んだとも言われています。「わび・さび」から「わびすけ」の
名が生まれたという説もあるようですが、利休門下だった人の名前が
侘助だったとか、侘助という人物が朝鮮半島から持ち帰ったからなど、
諸説はマチマチなようです。
名前の由来はともかく、見るからに上品な花の輪郭と、どこか愛嬌の
ある「侘助」の呼び名のギャップの妙味。なかなか面白いですね。
侘助と聞くと、すぐ脳裏に思い浮かぶことがあります。もう20年以上も
昔の話になりますが、当時、デッサン会でご一緒した方から一枚のハガキを
頂いたことがあります。水墨画で個展をされるほどの腕前の方でした。
お誘いを受けて行った銀座ギャラリーでの展示会で、椿の絵に見とれて
いると、後日、このハガキがポストに‥。
「侘助に 午後の陽ざしの すぐ翳る」
俳画というジャンルになるのでしょうか。格調の高さを感じます。
このハガキを見る度、しばらく後に天に召された老紳士の、温和な
お顔が思い出されます。
目も心も楽しませてくれる春の訪れが、もうそこまで来ています。
コロナも気になるところですが、春風を受けに外に繰り出しましょう!