「喜ぶ者といっしょに喜び、泣く者といっしょに泣きなさい。」
新約聖書 ローマ人への手紙 12章15節
<泣く者といっしょに泣きなさい>という言葉は、私たちも
比較的たやすく実行できることかもしれません。悲しんでいる人に
寄り添うこと、同情または同調するのは、ごく自然にできる行為
だからです。一方、幸福の絶頂にいる人が目の前に現れたとしたら、
その人と全く同じ心の状態で、喜びの沸点を合わせることのほうが
難しい気がします。人の心は、こうありたいと思うほど理想的な
ものではなく、かなり屈折した不自由なものなのかもしれません。
それはそうとして、「共感すること」は人間に与えられた たまもの
の中でも、最も美しいことの一つだと思うのです。人という字がお互いに
寄りかかって成り立っているように、人は人を必要としています。
「優」の字の成り立ちは「憂える人の傍らに立つ」。まさしく、優しさ
そのものを表していますものね。そばにいる人の心に、今、どんな感情が
流れているのかを感じ取れるように、お互いの心の波動を合わせていく。
それが、いわゆる「共感すること」ということなのかもしれません。
「共感すること」の麗しさ――。
ゲーテがそれを、ぴったりの言葉で表現してくれています。
☆ ☆ ☆
地球にある山や川や町だけを考えるなら
この世界は空虚である
だが、ここかしこに
私たちと ともに考え
ともに感じる人がいて
離れていても
心では近くにいる人があるのを知るとき
地球は人の住む園となる