「星を動かす少女」
松田 明三郎
(まつだ あけみろう)
クリスマスのページェントで
日曜学校の上級生たちは
三人の博士や
牧羊者の群れや
マリヤなど
それぞれ人の眼につく役を
ふりあてられたが、
一人の少女は
誰も見ていない舞台の背後に隠れて
星を動かす役が当たった。
「お母さん、
私は今夜 星を動かすの。
見ていて頂戴ね ―― 」
その夜、堂に満ちた会衆は
ベツレヘムの星を動かしたものが
誰であるか 気づかなかったけれど
彼女の母だけは知っていた。
そこに少女のよろこびがあった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
主役、準主役、脇役と、劇にはそれぞれに必要な役割があります。
たとえチョイ役でも、エキストラでも、その劇に欠かせない大切なピース。
観客には舞台に登場する人しか見えませんが、裏方として黒子に徹する
人もたくさんいることを、私たちは知っています。
劇に関わるすべての人の力が合わさって、初めて劇は成り立つのです。
少女にはスポットライトは当たらないけれど、実はとてつもなく大きな
役割を担っているように思えるのです。
なぜって、星の動きによって象徴されるイエス・キリストの降誕が
舞台の背後で星を操る、この少女の手にかかっているのですから。
そして、たった一人でいい、そのことを知っていてくれて、
一緒に喜んでくれる人がいるなら、それで十分。
一生懸命に、与えられた役割を果たす意味と喜びがあるのです。
一編の詩を味わいつつ‥。
良いクリスマスを!