もう何十年も前のこと。子どもが学校から帰るまでの時間を
利用して、蒲田にあるユザワヤの編み物教室に通っていました。
当時は相模原に住んでいましたから、ゆうに往復3時間はかかる
距離。若い時はエネルギーがあるのですね。修了証書も無事、
いただくことができました。
ご近所に編み物が得意な友人がいて、作り目から教わったのが
まず第一歩でした。彼女が生み出すアートのような作品群に
魅了され、一本の糸から生まれるミラクル・ワールドに、
すっかり嵌ってしまいました。
家族用(4人分)を1シーズンに2、3枚ずつ編むのですから、
いったいどれだけの枚数を編んだのでしょう? 何か取り憑かれた
ように熱中していた十数年間は、なんだったのでしょうね。
毎年、YMCAのスキー教室に参加していた二人の息子のために、
とにかく軽くて温かいセーターを着せたいという母心。それが
大きなモチベーションだったのかもしれません。当時、買い漁った
バーゲン品の毛糸が、まだ少し押し入れに残っています。
夫の家系が超がつく長身族。わが家の息子たちも上背があります。
成長と共にセーターのサイズもどんどん大きくなって、編むのに
時間がかかるようになり、いつしか編み物熱もフェイドアウト。
今は、たまに自分用のものを編むくらいです(^o^;)
最近、ニットデザイナーである友人から機械編み用の極細糸を
大量にいただきました。もう大作は編む気力はありません。そこで、
写真にあるように、カードのパーツ用に使わせていただいてます。
味のある、段染めのグラデーションが気に入っています。
こんな糸の使い方もまた面白いですね。
人はなぜ糸を編むのか?
糸を編む時、それを贈る人への思いが籠もります。ちょっと俗っぽい
言い方ですが、糸は人をつなぐ身近な表現手段。思いを形にする
ために、人は糸を編むのかもしれません。
「少年の日」
佐藤 春夫
四、君は夜な夜な毛糸編む
銀の編み棒に 編む糸は
かぐろなる糸 赤き糸
そのラムプ敷き 誰がものぞ。
※かぐろなる=黒々としている