シャロンの薔薇

聖書から学んだこと・日々の出来事・ハンドメイド

金色の世界

イメージ 1

      金星 (ヴィナス)     三好 達治

  海のやうな 夕べの空に
  耳鳴りほどの羽音をたてる
  金の蜜蜂…

  谷の向ふ
  向ひの山の
  疎林の上に休んでゐる 金星(ヴィナス)

  やがて彼女は尾根に隠れる
  私は石の上に登る
  しばしの間 彼女は見える

  やがて彼女は尾根に隠れる
  私は丘の上に立つ
  しばしの間 彼女は見える

  彼女は隠れる 彼女は沈む
  彼女は沈む 彼女は去る
  地が歪む 山が傾く…

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金色というイメージの広がりの中に、ふと思考を漂わせるのが好きです。
旧姓の一字に「金」が含まれているので、一種の郷愁のようなものを
感じるせいかもしれません。

詩人は夕暮れの山路から仰ぎ見た金星を、金の蜜蜂… と表現しています。
光を反射しながら宙を飛行する蜜蜂の羽根は、さながら瞬く金星の光のように
思えたのでしょうか。

空を自分の玉座として、どっかり腰を据えるヴィーナス。
彼女は座り心地の良い椅子から、一歩も動こうなどとは考えていません。
それなのに詩人は、いかにもヴィーナスが優雅に動いているかのように見立てます。
日が傾きかけた暗い山中で、心細さを紛らわせながら家路を急ぐ、詩人の心模様の
現れなのかもしれません。
そんな詩人の屈託のない遊び心に、強く心惹かれます。


写真は山中湖・花の都公園のキバナコスモス。
友人が撮影したものです。
ここにも金色の世界が広がっているようです。